魅惑の濱仏①「證菩提寺」の阿弥陀さんは、背中で語りき。

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横浜の仏像に会いに 

 横浜に住まうようになって、はや3年。いま、自分の住んでいるこのエリアには、いったいどんな仏像がいるのかしら、ということで行ってきました横浜市は栄区にある證菩提寺。

 同行者は、今なお緩やかに存在している仏像部の婦人連。仏像エリートの桃さん、仏像部部長のニャンピョウ。同行二人、ならぬ三人。(…わたしは名ばかり副部長です)ちなみに、現在3人が3人とも横浜在住という奇跡のハマっ子トライアングル!を形成しているんだ。元住んでいたところはバラバラなのに、3人集いし横浜、是なにかしらのデスティニー…

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これはデスティニーズチャイルド。人は、きっと「貫禄」と書いてビヨンセと読む…

 

 桃さんに拝観予約をしてもらったのですが、土日祝日は法事でお忙しいとのことで、平日のみ対応可能とのこと。ド平日のド昼間、おおいに背徳感を感じながら拝観したわけです。

本堂の阿弥陀さんは、凛とした武士感

 あいまみえたのは、本堂にいらっしゃる阿弥陀坐像(鎌倉時代)と、収蔵庫の阿弥陀三尊(藤原時代)。どちらも阿弥陀さんながら、個性のベクトルはまったく異なっていて、実に味わい深し。

 

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個人的には武士感あった。


 神奈川県の重要文化財に指定されている本堂の阿弥陀坐像はとても黒々として威風堂々、凛とした佇まい。武士感、というか。そもそも、鎌倉幕府が開かれる少し前(文治5年)に、源頼朝が討ち死にした部下の佐那田与一義忠(平家物語では義貞表記)を弔うために建てたお寺という背景を知ると、納得の印象。ちなみに、佐那田氏は当時、神奈川県で勢力を持っていた三浦氏の一族とのこと。

 阿弥陀さんの顔立ちは端正で、イケ仏(イケメン顔の仏像)の類に入るんじゃないか、というのは婦人連の総意。願成就院の本堂や北条寺の阿弥陀さんと作風が近い、ていうのはよく指摘されるところだそうです。が、もしかしたら、仏師は依頼者である源氏や三浦氏の誰かを、もしくは武士の雰囲気のようなものをエッセンスとしてまぶしたんじゃないかな…と妄想したくなるくらい、なんだか実在感を感じる仏像でした。


 そして、ナナメ横から見ると、とても遠くを見据えているように見えるんですが、正面に立つと見つめられている感がパないという、仏像あるある。個人的には、玉眼の仏像の割に、視線の印象がソフトだと思いました。

 あと、本尊の右隣に、出所や年代不明のプリミティブな薬師さん(立像)がいらしたんですけど、行かれた方は、これも見てほしい…神像のような雰囲気もあって、仏像でいったら円空、木喰が頭によぎるような、小さなお薬師さんです。とても気になった次第。

 

 

後ろから見た背中の安心感、台座にミルククラウン!?

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台座の下のところがミルククラウンっぽい。

 

 本堂でご住職のご説明を受けた後、収蔵庫へ。桃さんと同郷ということが発覚したヤングめのお坊さんによるご説明。その節はどうもでした!
 収蔵庫の阿弥陀さんは、三尊形式で藤原時代の作。国の重文指定を受けています。本堂の阿弥陀さんよりも一回り大きいサイズ感で、木肌に残った金箔が、当時の絢爛さを語っている…!

 本堂の阿弥陀さんとは打って変わって、穏やかな佇まい。個人的な見どころは、右肩を下から眺めたときの、背中の量感!これ、見たことある、この背中…

 

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いつかのあの背中だよ!ホラ、夏休みの匂いがする…


 ええと…夏に体格のいいメンズが着古したTシャツ着てると、こうなってない…!?ほめてます、つまるところ、安心感だこれは。思わずもたれかかりたくなるような、安心する背中だ。
 もう一点、個人的な見どころをあげるとすれば、蓮華座。まず、組まれた足のすぐ下にある台座の蓮弁が、フルで装着されておらず、まちまち。いちばん上に重なっていた蓮弁を、一周剥いだような状態。こういう形をあんまり見たことがなかったので新鮮でした。あ、蓮弁って、サンゲ型なんだ!という気づき。蓮弁の根元は、曲線で閉じるようなフォルムではないんですね。

 そして、台座の下にある受皿…日本酒でいうところのグラスの下の枡部分(!)がミルククラウンを思わせるような、ひらひらと柔らかなラインを描いていて、目で追うとやさしい気持ちになる。 

 ほかに、収蔵庫内には、これまた出自不明の滝行中のスター僧侶(ざっくりとした説明…)の姿を刻んだ像や、小さな石像なども並んでいるので、そちらもあわせてご覧いただきたいです。

 横浜の市街地から、こんなに近い場所に、こんなに見応えのある素敵な仏像がいるたぁね!あーた!デヴィ・スカルノこと、根本七保子もびっくりだよ。満足度、高し。ハマっ子ならずとも、必見の仏像ではないかなと思います。また近々、濱仏探訪してみたく候。